Kesämökki

別荘に日が沈む

別荘生活

2006年7月7日金曜日

今日は七夕。日本では天の川を見ながら「星に願いを」な日ですが、ここでは夜はまだまだ先ですから、そんなわけにも行きません。オウルではまだ夏の白夜が続いています。夏のフィンランド人の楽しみといえば、別荘生活。フィンランドではかなりの割合の人が自宅の他に別荘を所有していて、夏休みはそこでのんびりと暮らします。別荘と通常の家屋とは税の上でも区別されていて、上水道、下水道、電気のいずれかが欠けていれば別荘として取り扱われて、不動産税が安くなるとのこと。ま、どれか一つでもかけていると、この国の冬を越すのは一気に難しくなりますから、当然かなという気がしますが。

私達も今週末は、友人の別荘にお呼ばれすることになりました。この友人、私の前任地でフィンランドからの客員研究員として一年間日本で研究を共にした仲間ですが、私が2001年にフィンランドを離れてからしばらくして、彼が転職したのを境に連絡がぶっつりととぎれていました。が、先日レンタカーを借りた際に郊外にあるオウル最大の電気屋に出かけたところ、店の中でいきなり "What a hell are you doing here?" と彼が声をかけてきて再会と相成ったわけです。いやぁオウルはせまい。電気屋もそうそうあるわけではありませんから、こんな所でばったりです。「すてきな別荘を手に入れたから、是非遊びに行こう」というお誘いに、二つ返事。彼等夫婦が休暇に入る本日から、週末の別荘生活を楽しみに行くことに成りました。

奥さんの仕事が捌けてから、彼の別荘のあるPosio(ポシオ)の街まで約300キロのドライブ。オウル市内からKuusamontie(クーサモ通り)をずっと東へ。退屈な一本道を走っていると、途中日本語で『「扉」と「窓」』とかかれた巨大な看板が現れます。これ、Profin OYという扉と窓を打っている会社の看板のようで、こちらのページの説明によると、社長が日本通で、社内には日本語の看板がそこここにあるとか。いやしかし、『「扉」と「窓」』という看板はやっぱり妙ですよ、社長。

『「扉」と「窓」』を通り過ぎたところが、Pudasjärvi(プダスヤルビ)の街。2001年に友達にグライダー飛行体験につれてきてもらったところです。車はここで一旦停止。なんでもこの先大きな店がないということで、ここで食料品など必要な物を一式買いそろえます。彼の別荘はフィンランド人の別荘の標準系、上下水道、電気その全てが存在しないとのことですから、水と食料、それに別荘生活になくてはならない「酒」をがっつり買い込みます。

別荘 更にしばらく車は走って、ポシオ郊外の別荘に到着。フィンランド標準の湖畔に森の中に隠れるように建つ、ログハウス作りのすてきな別荘です。この別荘の特別なところは前が砂浜だと言うこと。フィンランドは氷河に削られた岩石が隆起して出来た国ですから、全体的に岩が多く、湖の岸というと大抵岩がごつごつしたところです。こんな風に砂浜になっていることはとっても珍しい。更にこの別荘、築が古い関係で湖岸から大変近い所にあります。新しい別荘は湖岸から100m程度話して建てないと行けないそうですから、こんな好立地の別荘はそうそうありません。いやはやなんと贅沢な。

船 当然湖岸にありますから、船も装備。この船に乗って、釣り三昧の週末を楽しもうというのが、今回の趣向です。船に乗って、ルアーを垂らしながら、魚がかかるのを待つ。待っている間は、フィンランド製のKoskenkorva(コスケンコルバ)ウォッカを瓶から直接呷って、その後で炭酸水をのどに流し込む。ま、胃の中でソーダ割りにしようという算段ですな。優雅この上ない生活です。

岸づり 船を岸に戻したら、夕方は岸からの釣り。生餌や、フライフィッシングで小物の魚を狙います。残念ながら、この週末は天気が良すぎて水温が高いと言うことで釣果は今ひとつ。私も彼もかかった魚(釣り人の常識で「大物」でしたが(笑))を船に引き揚げるまでに一匹ずつ逃がしてしまいましたから、更に釣果は今ひとつ。「お魚、お魚♪」と楽しみにしていた妻はちょっと不満顔です。私はのんびり楽しみましたから、なんの文句もないですが。まぁ、それでも釣れた魚を濱で薫製にして食べれば、それなりに味わえます。

BBQ 魚が釣れようが釣れまいが、別荘の食事はバーベキュー。湖畔に建つバーベキューコテージで、買ってきた肉を焼きます。町中でバーベキューしてもおいしいものはおいしいですが、湖畔のバーベキューはまた格別です。

薪割り 食事の後は、サウナタイム。電気がないわけですから、当然サウナを暖めるのは薪。ラップランドの白樺は節が多くてねじれていると来ているので薪割りも大変ですが、薪を細かく割って、湖畔に見えるサウナまで運んでいきます。

釜入れ で、薪をストーブにくべて火を入れる。釜の中には水を入れるようになっていて、ストーブが熱く成りすぎるのを防ぐと共に、ここで温かくなったお湯は体を洗うのにも使います。ストーブの上には石がのっていて、焼けた石に水をくべてサウナに蒸気を充満させて汗を呼びます。乾燥した気候のフィンランドでは、肌に水を与えるこのLöyly(ロウリュ)は重要な役目を果たします。大阪でも体験できる所があったりしますので、お試しの程を。本当にロウリュは蜜の味、体感温度がぐっと上がって、一気に体から汗が噴き出して気持ちいい。汗をかいたらVihta(ビヒタ、Vasta・バスタともいう)という白樺の小枝をまとめたものを水につけて、叩いて体を洗います。このとき白樺の香りの着いた水がストーブの石にかかって、さわやかないい香りの蒸気があがります。もう一つ、サウナにつきものなのがビール。サウナの中に便を持ち込んで、ちびりちびりとやりながらじっくりと楽しみます。飲み終わった後は、瓶の中に水を流し込んで、ビールの香りをほんのり付けた水でロウリュ。今度は焼きたてのパンの香りが楽しめます。ビールとソーセージとサウナはフィンランド人の生活の基本という感じです。

夕焼けの湖 ビールをしっかり飲んで水分をとって、ビヒタで十分体を叩いて垢を出したら、そのまま湖へ直行。女性はビキニを着る場合もありますが、大抵はそのまま裸で泳ぎに行くのが普通です。別荘地では隣の別荘はそんなに近くないですから、あまりに気にすることもないですし。冬場好きな人は柔らかい新雪の上を転げ回ったり、氷を割っておいてそこの水に飛び込んだりすることもありますが、まぁ夏の楽しみにしておいた方が無難です。それにしても、広い砂地の湖に寝そべって、サウナで火照った体を湖の水でさましながら、眺める夏の真夜中の夕焼けは美しい。なんだか体中のいろんな毒が抜けていくような気がします。

森の中ですから、体中をラップランドの巨大な蚊に刺されて、街に帰ってから体中が痒いのは玉に瑕ですが、フィンランドの別荘生活は最高です。私も一件別荘を買おうかなぁという気になります。まさに何もない贅沢です。