Mustionlinna

ムスティオンリンナ

ムスティオンリンナ

2006年8月22日火曜日

さて、18日からヘルシンキ地域をうろうろしているわけですが、丁度今日は一泊予定が開いていたので、レンタカーを借りてマナーハウスに泊まりに行くことにしました。マナーハウス(Manor House)とは貴族の屋敷や邸宅などをそのまま宿にしたもので、イギリスなどでは結構見られるものですが、フィンランドではまれ。フィンランド自身が1917年に独立するまで長らくスウェーデン、ロシアの属国だったわけですから無理もありません。フィンランド旅行では、マナーハウスよりも、どちらかというと、ファームステイの方が一般的かも知れません。

ですが、今回はマナーハウス。その中でもフィンランドで最も有名なムスティオンリンナに泊まることにしました。ヘルシンキ市内でレンタカーを借りて、西に向かって出発。約80kmの行程です。

スウェーデン語が先 途中大雨に降られながら、漸くムスティオの町に到着。マナーハウスがあるぐらいですから、支配階層だったスウェーデン人が元々多く住んでいる地域。ここまで来ると、スウェーデン語のSvbartå(スヴァルトー)という町の名前が、フィンランド語のMustioよりも上に書いてあります。フィンランドは長らくスウェーデン人の支配下にあったことから、古い町にはこんな風にスウェーデン語の名前が付いています。ちなみにヘルシンキにはHelsingfors(ヘルシンフォルシュ)、オウルにはUleåborg(ウレオーボルグ)という名前が付いており、スウェーデンから飛行機に乗るとこの名前で記載されていることがあっておろおろします。フィンランド国内のスウェーデン語人口は高々6%なのですが、元支配層ということもあって裕福な層が多く、フィンランドの政治の中心にも深く食い込んでいます。そんなこんなで、多くのフィンランド人は余り快くは思っていませんが、スウェーデン語は今もフィンランドの公用語です。つい最近まで、全てのフィンランド人は、フィンランド語の他にスウェーデン語を学ぶことが義務づけられていたりしました。漸く最近は「選択肢の一つ」にまで格下げされたようですが。私の専門分野、福祉関係の世界では、フィンランドは世界でも珍しい手話を公用語として認めた国として、「福祉先進国」の例に挙げられることが多いですが、富裕層のスウェーデン系フィンランド人が自らの言語を守るために「少数言語保護策」を国の主要課題にしたというのがその真相。物事には大抵表裏があるということですね。そんなこんなで、スウェーデン系住民の多いこの地域では、全ての標識はスウェーデン語中心。フィンランド語の地名を頼って旅をする外国人にとってはややこしいことしきりです。

鉄鉱石 さて、ムスティオに何故スウェーデン系の住民が多く住み着き、屋敷まであるかというと、この近くにあるロホヤ(Lohja)で鉄鉱石が産出し、ほど近い湖の側のこの場所に製鉄所が建てられたから。1560年に建てられた製鉄所は元々スウェーデンの王族の所有だったのですが、その後個人に売却されており、売却を受けた一族がこの地に住み着いたのが始まりなのだそうです。詳しく聞いてみると、管理官としてやってきた貴族が、現地の製鉄所の娘に惚れ込んでこの地に根を下ろしたとか言うどこでもありそうな話なのですが。とにもかくにも、ここはフィンランドの鉱業が始まった場所として、今も鉄鉱石が記念碑的におかれています。

今夜のお宿 私達が泊まったのは、そのお屋敷そのものではなくて、荘園の中にある元製鉄労働者の家。ここの領主は相当のヒューマニストだったらしく、早い時期に週休を導入し、労働者の健康保険も肩代わりしていたのだとか。今で言うところの社会保険制度ですね。ですので労働者の家とは言っても非常に快適な家に仕上がっています。こんなかわいらしい建物、今でも普通に家として使えそうです。

お庭 このホテルで贅沢だなぁと思ったのが食事。荘園ならではのこんな美しい庭を眺めながら、昔の馬車小屋を改造した静かなレストランで食事をとることが出来ます。

ヘラジカステーキ ここで私が頂いたのは、フィンランド人が「トナカイよりずっとおいしい」というヘラジカ(Hirvi:ヒルヴィ)のステーキ。食べかけの上にピントのずれた写真でごめんなさいですが、肉の厚みは見て取っていただけると思います。本当に柔らかくておいしかったです。今思い出してもよだれが...。

サウナ もう一つの贅沢が、湖の向こうに移っている建物。サウナです。フィンランドではほぼどこのホテルにもサウナがありますが、湖(といっても発電用のダムでせき止められた人工湖なのですが)に面したサウナがあるところはそうそうありません。小さな会議場もあり、サウナもあることから、ここでは結構頻繁に様々な会議や学会が開かれています。今日も2グループほどが学会をしているらしく、サウナも大盛況の雰囲気でした。ホテルも小さいので貸しきりになることが多く、なかなかここで会議を設定するのは難しいんだそうですが。

タッカに火をおこす で、そのホテルに泊まって何をして遊んだかというと、これ。先日友人の別荘で暖炉の焚き火がすっかり気にいった妻が、部屋の中に暖炉と薪を見つけるやいなやフロントに電話をして「火をつけていいか?」と確認して、早速点火。

煙突 でも、生兵法は怪我の元。ちゃんと暖炉の使い方を分かっていなかった私達は、この両側にあるレバーを引いて煙突の出口を開けるのを忘れ、さらには、煙突掃除用の真ん中の引き出しを開けてしまったものだから、部屋の中に煙が充満。後で私が使い方を思い出してレバーを引いて空気の流れを作ったものの、後の祭り。

禁煙 この建物、禁煙だったんですが、すっかり建物中煙のにおいが充満していました。同じ建物の他の部屋の人たちは、なにぶん煙たかったことでしょう。本当にごめんなさい。

コルク 翌日はお館の方を見学して、庭にある、フィンランドに三本しかないというコルクの木を見に行った後...

フィスカースの時計台 「芸術家村」として有名なFiscars(フィスカース)に立ち寄って、日本からやってくる友人をサボンリンナへ案内すべく、ヘルシンキ=バンター空港へと戻っていきました。

フィンランドの地方都市は、それぞれに特有の顔があり、のんびり過ごすとその良さが見えてきます。ムスティオンリンナもフィスカースも一泊以上のんびり過ごさないとその良さは分かりません。日本風の「弾丸ツアー」で来るには、どこももったいなすぎる所です。「のんびり・ゆっくり」がフィンランドを楽しむこつのような気がします。