Junamatka

オウル行急行列車

鉄道の旅

2006年7月25日火曜日

日本で旅行の足というと鉄道が最も一般的な気がしますが、フィンランドでは車が主流。どこへも彼処へも車にキャンピングカーを繋いでいってしまうのがフィンランドスタイルです。国内線飛行機は高価ですからビジネス用途というのが一般的ですし、旅行の足という感じではありません。日本への往復ディスカウントチケットの中には、国内線フライトの往復正札よりも安い場合もあるぐらいですから。もちろんバスでも鉄道でも旅行は出来るのですが、なんせ自動車よりも遅い上に時間の自由がきかないと言うことで利用者は必ずしも多くないようです。

今回は同僚の別荘にご招待を受けて、別荘のある湖水地方Kuopio(クオピオ)の郊外へ。行きはこんな具合に有人の自動車を私が運転してKUOPIOへ向かいます。いかんせん生後一ヶ月のご子息付きですからご両親に運転させるわけにもいきませんしね。目的は色々ありますが、生後一月のお子さんを祖父母にご披露するのもその目的の一つでもありますので。

savusauna 別荘では、スモークサウナと呼ばれる旧式のサウナを楽しませてもらいました。フィンランド語でsavusauna(サブサウナ)とよばれるこのサウナは、煙突がついておらず煙を室内に充満させて暖めて、ある程度煙が抜けてからはいるというタイプの物で、中にはいると煙の香りがしていて何ともゆかしい感じです。フィンランド人は一般的に「サブサウナは柔らかい」といいますが、余りそれは感じませんでしたが。サウナについて詳しくはフィンランド政府観光局のページをご参照下さい。

秋の味覚 湖水地方はかなり南の方ですが、やはりここもすっかり秋の気配。夏の名物蚊やらブトやらアブやらには噛まれ倒しますが、別荘の周りにちょっと手を伸ばして、赤いスグリ(Punaherukka)やラズベリー(Vadelma)をいただくことも出来ます。5月半ばに植えたはずですから二月ほどしか経っていないはずなのですが、周辺の畑はすっかり収穫前の黄金色。こんなにも成長が早いのは、日照時間が非常に長いせいでしょうか。

シュールな像 さて、今日はそんな別荘生活に別れを告げてオウルに戻ります。当然赤ん坊は祖父母としばらく一緒ということで、帰りは鉄道の旅です。電車に乗るためにクオピオの街へ。クオピオには湖水地方を見渡せるPuijon torni(プイヨタワー)で有名な街。ここからの景色はすばらしい物があります。タワーから街に出ると、こんな風に魚を両手に持った子供の像がある広場でマーケットが開かれています。それにしてもこの像、どの角度から見ても何ともシュール。

アルビノ? マーケットはなかなかいろんな物があって、オウルなんかよりよっぽどにぎやか。その中でも目についたのがこれ、ラズベリーのくせに「白」があります。うーん、アルビノなんでしょうか??周りの赤色のフルーツの中でなんだかものすごく目立っています。

駅 そんな感じでぶらぶらしていると出発の時間が近づいてきたのでKUOPIOの駅へ。ここからはフィンランド国鉄の急行電車に乗って、オウルに向かいます。ここからオウルまでは5時間弱の旅。本当に車と同じ程度の移動時間がかかるのんびりとした旅です。

VR フィンランド国鉄はフィンランド語でValtio Rautaie(バルティオ ラウタイティエ)、Valtio=国、rauta=鉄、tie=道ですから、まさに国有鉄道そのものです。一般的には略してVRと呼ばれます。そう、フィンランドではVRはVirtual Realityではありません。http://www.vr.fi/とやると国鉄のページが開きます。クオピオ駅の空にも誇らしげにVRの文字が。この国は携帯電話の国であると同時にVRの国。私はフィンランドに携帯VRの講義をするためにやってきているのですが、携帯VRはまさにこの国のためにあるようなものです。

材木列車 VRが主力として活躍しているのは、フィンランドの主要産業の一つ、パルプ製造に使う材木の搬送。急行列車の窓からは、駅毎にうずたかく積まれた材木の山と材木を乗せた貨物列車をよく見かけます。

ロシアの貨車 もう一つのVRの大事な役割が隣国ロシアとの貨物輸送。駅におかれている貨車を見るとこんな風にロシア語が目立ちます。フィンランドの貨車もロシアに相当行っているらしく、一時期ロシアで貨車が無くなることが多かったために、衛星やらRFIDやらを使って貨車の追跡なんかをやっていたなんて話も耳にします。

車内 そんな沢山の貨車とすれ違うために、単線を走る列車は各駅停車のように待ち合わせ停車を繰り返しますのでどうしてもスピードは上がりません。でも車内は快適そのもの。こんな風にゆったりとした椅子と机が二等客車でも用意されています。

コンセント 更に机の所を目をこらしてみると「PC」と書かれたコンセントが。日本でも一部の新幹線車両で電源をとることは出来ますが、こんな風に普通の急行列車でPCを繋ぐことはまず出来ません。この辺もサービスの一環なんでしょうか。ヘルシンキからオウルまで8時間も旅していれば、確かに電源がないとバッテリーは持ちませんが。

子供車両 もう一つ面白いなと思ったのが、このLasten Vaunu。子供車両です。中には滑り台なんかもあって殆ど保育室。これならば子供連れでも心配することはほぼありません。子供連れなら車より電車の方がよいかも知れないなぁという気がしてきます。

食堂車の食事 午後3時39分発ですから途中でおなかも減ってきます。日本ではすっかり姿を消した食堂車で夕食をとることにしました。メニューは「本日のスープ」。レンジで「チン」でしたが、なかなかおいしいスープです。

景色 車窓の景色は、湖水地方やKajaani(カヤーニ)の湖が時々姿を現しますが、基本的にはこんな感じ。2001年に日本の大学の事務官の方がヘルシンキからオウルまで電車で来られた際に「またなんで、8時間もかけて列車でこようなんて思われたんですか?」「いや、フィンランドの景色を体験せねばと思いまして。」「で、いかがでした?」「いやぁ、木また木でした。」という会話をしたのを思い出しました。まさに木が淡々と車窓に続いています。これでどこを走っているとか、見えている物がなんだとか知識がなければ、楽しめという方が無理でしょう。景色に付いているラベルが分かっている、Augmented Realityって大事だよなぁと、思わず仕事を思い出してみたりなんかしてしまいます。

ちなみに、手前に流れている赤い花は柳蘭。フィンランド北部ではどこでも彼処でも見かける花です。この花、オウルの友人によるとフィンランドでは別名「酔っぱらいバラ」と呼ばれているそうで、酔っぱらって道ばたで眠ってしまった旦那が、目が覚めてとりあえず嫁のご機嫌を取るためにその辺から摘んでくる花なんだとか。そのぐらいどこにでも生えている花と言うことなんでしょうけど。

到着 そんな酔っぱらいバラを眺めながら、駅舎の横に洗濯物が干してあるようなのんびりした駅をいくつも通って、急に人の気配がしてきたなと思ったら、午後8時過ぎにオウル駅に到着。田舎をずーっと通ってきたら、オウルはまさにメガロポリスという感じでした。


P.S. プイヨタワーの土産物屋を物色していたら、こんなものを発見。

蚊の別荘 その名も「蚊の別荘」。確かに蚊にぴったりサイズ。

蚊の家 説明書によると、家の近くにつけておけば、蚊は自分の家があるから貴方の家には入ってきませんとのこと。そんなあほな。


P.S.2 クオピオから仕事の関係で一足延ばしてヘルシンキへ行ってみると、こんなものを発見。

壊れてる ここまで壊れている日本語は久しぶりに見ました。セールになっていますが、誰も買う人いなかったんでしょうね。あんまりかっこよくないもんなぁ。


P.S.3 今日はもう一丁、ヘルシンキ最初の地下街Gallariaから。

ちょっとかわいそう フィンランド語ではJは英語のYの音になりますので、これで「パーヤネン」と読みます。これ、フィンランドではそこそこ一般的な名字。ちなみにこのお店は宝石屋さんです。言語の不幸ですが、フィンランドで結構一般的な女性のFirst name、Minna(ミンナ)とかHenna(ヘンナ)とかがこれにつくと、日本でお仕事をされるのはちょっと絶望的な感じです。有名なAhonen(アホネン)なんて名字も、フィンランドでは一般的な物。発音が近いとこういう不幸が起こります。

逆に、日本の花子さんなんどは、フィンランド語では「蛇口ですか?」と言う意味になってしまいますのでこれもなかなか不幸。フィンランド語の-ko?というのは日本語の-か?と同じ意味ですので、日本女性は結構不幸な名前になる方がおられるようです。

でも、最も不幸なのは私。私大分県別府市生まれなのですが、フィンランドでお話しするときは「京都出身」(ほぼ京都で育っているので嘘ではない)と言うようにしています。フィンランド語でVeppuという単語は隠語になるようで、女性の前でOlen Beppusta(オレン ベップスタ、私は別府から来ました)等と言った日には笑われるか、顔を赤らめられるか、二度と会話してくれないかのどれかでしょう。男性の前でも「そりゃ人間そこから生まれるだろう」と言われます。何となく想像はつくのですが、私も実はまだ正確な意味を把握していません。誰も教えてくれないですし、辞書にも載っていませんから。でもいつもこんな感じの反応が返ってきます。昔フィンランドの語の授業では、女性の先生に「ふざけないで」と偉い剣幕で怒られましたし...。

別府出身の方、フィンランドにおいでになる際はくれぐれもご注意を。