Wireless City Oulu

学会は盛況

Wireless City Oulu

2006年6月5日月曜日

今日からオウルで学会。その名も Wireless Cities 2006 Confernceです。おもしろいのはこの学会、主催が「市」ということ。City of Ouluが主催者として学会を取り仕切り、オウル大学が実務に当たっています。実務に当たるのは、当然我がTOLと工学部。そのなかでも、CWC(Center of Wireless Communications)が中心的な役割を果たしています。学会自身は持ち回り開催のようですが、今年はオウルで開催です。市が主催する学会というと、私が知っているのは岐阜市がメインスポンサーを実質的に果たしているVSMM(Virtual Systems and MultiMedia)位でしょうか、なんだかとても珍しい感じがします。今回のWireless cities conferenceの受付は市役所に置かれ、キーノートなども市役所で行われ、レセプションも市の主催で行われています。大変な力の入れようです。

オウルという街は、紛れもなくWireless Cityです。オウル大学を中心とした技術開発からのスピンアウト企業が、Oulu大学の周りで活動しており、それらが協力して活躍の場を広げている感じです。その全てがWireless関係の会社というわけではないですが、オウル大学、VTTという中心研究所を核にして、そのWireless Stationのように連携しながらそれぞれが発展していっています。そもそも、Nokia Mobile Phonesの前身、Mobilaですらフィンランドの国立研究所VTTとの共同開発で培った技術を足がかりに世界企業へと変身していったわけですから。いかに研究開発が上手く街を支えているかが分かります。このモデルを学ぶために、日本から沢山の方々が見学に訪れておられるのもよく分かります。うまくいっているのには数々の「たまたま」と「フィンランド的な部分」とが絡み合っていますが、国の政策がその一翼を担っていることは否定できません。

その一端が垣間見えるのが、 Pan Oulu ネットワーク。このネットワーク自身は、昨年オウル市が開闢400周年を迎えたのに当たって、「オウル市内に400のアクセスポイントを設置して、公衆無線LANを作ろう。」という、何とも「箱物行政」的な発想で作られたネットワークではあるのですが、公衆無線LANにしたこと、ここに企業と大学を巻き込んで、ちょうどFONのような(FONほど洗練されてはいませんが)公衆無線LANサービスを作ってしまったという点で、非常に先進的に見えます。おかげでオウル市内の主な場所では、どこでもお金を払わずに、無線LANにアクセスできるようになっています。 Pan Oulu に参加している企業、大学機関などは、このネットワークを使って自由に無線LANに関する実験をすることが出来ますので、これが新たなソフトウエア、ハードウェアイノベーションのテストベッドとして働いているわけです。「400年」という節目に、たまたま「無線LANの流行」があったので、箱物行政がしやすかったという「たまたま」の産物ですが、その構築と利用の過程で、様々な「知恵」が入っているというわけですね。この辺は、「バザール方式」で物事を考えることが好きなフィンランド人という「たまたま」なのかも知れませんが。我が故郷京都が建都1200年で「京都迎賓館」という箱物を作ったのと比べると、考えることしきりです。ま、建都1100年でできた、平安神宮と時代祭が京都の一つの看板になっていることを考えると、箱物も後の使い方次第で生きも死にもするのでしょうが。

それにしても沢山の貴重な話を聞けて、いろんなことを勉強することが出来ました。どうしても日本にいると「発表しないと学会に行けない」というよく分からないルールに縛られて、新しいことを学ぶために知らない学会に行くとが出来ないのですが、やっぱり学者たる者、人の話を聞いて勉強しないとダメですね。久しぶりに痛感しました。

"Life goes Mobile"はTOLのキャッチコピーですが、最近重たくなっているフットワークを軽くして、あっちへこっちへ出かけてみますか。