Juhulapäivä Satella

ベリーのピーラッカ

雨の祝日

2006年5月25日木曜日

今日はAscension Day(キリスト昇天祭)、Easter(復活祭)の40日後にキリストが天に召された日ということで、キリスト教国フィンランドは祝日です。でも今日は雨。せっかくの祝日ですが、恨めしく空を眺めながら家で過ごすほか有りません。天気予報によると火曜日から降り始めた雨は来週の前半まで続くと言うことで、しばらくは雨の日が続きそうです。火曜日からの雨で埃まみれになっていた木々も、すっかり若葉色に戻ってきました。祝日ではありますがオウル大学では昨日から入試が行われています。受験生にとっては今日が雨だろうが晴れだろうが大きな違いはないんでしょうけど、受験会場までの足を考えると、ちょっとかわいそうな気もします。

それにしてもキリスト教のお休みを見ていると、農業カレンダーに強く結びついているなぁという印象を受けます。秋に蓄えた食料が丁度底をつきはじめる3月にAsh Monday(懺悔の月曜日)、厳しい冬の終わり、そろそろ植物が芽吹き出すことに(Eastar)復活祭、そして5月の農繁期に入ろうという時期に昇天祭。食料が無くなった頃に落ち込んで、芽吹きだしたら復活して、農業に精を入れる時期には神の恵がやってくる。どこの国のどんな宗教でもそうですが、やっぱり人間にとって食料のあるなしが直接精神的な世界に繋がるんだろうなぁと言う気がします。やっぱりこの時期に雨が降るのはいいことなのかも。

フィンランドはご存じの通りヨーロッパの北の果て。オウルという街はその中でも北緯65度にありますから、とんでもなく北側です。従って元々食糧事情がいいところではありません。フィンランドの昔の生活に関する博物館などの展示を見ると、食料がなかった時代は白樺の皮の下側の少し柔らかい部分を削って、水にさらして、叩いて柔らかくして、焼いてパンを作っていたなんてことが分かります。苦労をして食料を手に入れていたんだなぁという感じです。まぁ、そのなれの果てがたまに出会うわら半紙のような味がするパンと、白樺からとれる魔法の甘味料Xylitol(キシリトール・フィンランド語ではクシュリトルと読みます)なんですが。

これが売り物 その名残でもないんでしょうが、フィンランドの食糧事情はお世辞にもいいとはいえません。特に野菜は状態が悪く、スーパーに行ってもこんな状態の野菜が平然と売られていたりします。結構傷んでいるものが多く、新しくて良い野菜を探そうと思うと結構面倒です。主食の芋に至ってまでも芽が出ている状態で売られていたりしますから、よく選んでやる必要があります。また、野菜や果物の管理の仕方を分かってないんでしょうが、アボガドやトロピカルフルーツを冷蔵庫でがんがんに冷やしておいてあるのは参ります。アボガドなどは商品を陳列する前の箱から大阪のおばちゃんモードで取り出して購入し、自宅でしばらく置いておいた方が、スーパーの陳列棚のものよりよっぽど好い管理状態でおいしく食べることが出来たりします。日常生活で使う野菜は、結局冷凍野菜のパックが一番ましだったり、野菜には苦労させられっぱなしです。

トナカイコーナー 一方、ハムやソーセージなどの保存食系は充実しています。Kauppahalli(市場)に行ってもこの通り、ずらっとトナカイのハムが並んでいます。市場には新鮮な魚も肉もあって、結構楽しく買い物が出来るのですが、豚の足、顔、牛の心臓、腎臓、血のソーセージなど、食べられる部分を徹底的に利用しようという姿が見て取れます。最近は内臓を食べる人は減ってきたんだそうですが。

からい? もう一つフィンランド人の食事で特徴的なのは、とりあえず辛みをつけないこと。何を食べても塩味がするか、甘いかです。最近は海外からの食料品がたくさん入ってきていますが、それも辛みに関しては効果無し。とにかく辛いものには飢えます。この瓶、「チリソース」で「100%チリ、トマトもジャムも全く入っていません!!」とラベルに大書してありますが、日本で言うところのスウィートチリソースでがっかりしました。というより、「トマトが入っていません」とチリソースの瓶に大書するという感性もすごいものがあります、つまり他のには入っているってことですからね。Sinappi(芥子ソース)の"HOT"を買おうとすると、フィンランド人に「それはとんでもなく辛いから気をつけた方がいいぞ」と注意されますが、食べてみたら「フン」と鼻で笑う感じです。辛いものが欲しければ、メキシコサルサソースを買うほか無い感じでしょうか、これだけはオリジナルには遠く及ばないにしても何故か辛いのですが。

ベリー じゃ、フィンランドで美味くて安いものはというと、ベリーMustikka(ブルーベリー)で日本の半分ぐらい、日本ではかなり高いMustaherakka(カシス・黒房すぐり)、Karpalo(クランベリー)もそこそこの値段で手に入ります。Vadelma(ラズベリー)、Puolukka(リンゴンベリー・コケモモ)、Mansikka(苺)なんかは冷凍の安いのがどこでも手に入ります。北フィンランド特有のLakka(アークティッククラウドベリー)等ももちろんオウルでは食べられます。ベリーにヨーグルトとアイスをかけて食べるのが最高。一日一回ぐらいはこれを食べている感じでしょうか。今日は妻がベリーのたっぷりのったパイをお昼に作ってくれてました。こういうお菓子も結構沢山見かけます。

秋になるとありとあらゆる所(それこそ道ばたにまで)にベリーがなって、沢山の人があちらこちらでせっせと収穫しています。フィンランドでは、秋ベリーを収穫して、ジャムやジュースに加工して、冬の間のビタミン元にしてきたんですね。この国の法律では、野生の花、ベリー、キノコについては、誰の土地に生えていても「収穫した人の物」ということになってるのも頷けます。

郷に入っては郷に従え、その土地で普通に育ったものが一番おいしく食べられます。フィンランドの街は森の中に埋もれるようにありますから、常に自然の恵みを身近に感じます。家の前の木々ではいろんな鳥たちやリスが走り回り、近くの湖では普通にカワウソを見かけます。ちゃんと文明的な生活をしながら森の中に常にいられるのは、フィンランド特有の贅沢です。この雨もベリーを沢山育てるための恵みの雨なんでしょう。