WAPPU!!

メーデーだぜぇ!!

2006年5月1日月曜日

本日はメーデー。フランスでは、先頃廃案になった新労働契約法の反対運動に端を発した学生デモが、ド・ビルパン首相の退陣を求めて列をなし、アメリカでは新移民法に反対して全土でヒスパニックがストライキをしています。ヨーロッパの経済競争力を失わせている労働者に有利すぎる制度の見直しと、外国人労働者の受入を巡って、ヨーロッパ全土で熱い議論が戦わされ、各国のテレビはそれぞれ独自の議論を展開する論客でにぎやかです。丁度Euro Newsがメーデーの歴史を取り上げていました。『メーデーは戦前の8時間労働に向けた労働争議に端を発し、戦後70年代のアナーキズムの時代を経て、労働活動の高まりに併せてメーデーの重要性は増してきたが、80年代・90年代にはすっかりその意義を失いバカンスの一つに成り下がる。そして21世紀、国際化の時代を迎えて新たな労働契約のあり方を求め再び盛り上がりを見せている中、2006年、フィンランドでは今年も学生が変わらぬ大騒ぎを繰り返していた。』とまとめています。そう、ヨーロッパではすっかり有名になりましたが、Vappu(メーデー)はこの国では学生のお祭りです。

Wappu公式ページとか、OuluのWapp公式ページなんかを見てもらうと分かると思いますが、Vappuの馬鹿騒ぎは、26日水曜日(Keskiviikko)から既に始まっています。毎夜毎夜町中のディスコは学生会によって貸し切られ、朝までダンスパーティ。オウル公式ページの21時からの行事はディスコパーティーです。しかもこのお祭りの宣伝は、私がフィンランドにやってきた3月にはもう大学中に張り出してありましたから、ずいぶん前からじっくり準備が進められているわけです。

しょんべんバスが行く 学生会が貸し切るのは、ディスコだけではありません。酔っぱらった学生を街の中心部と大学の間でピストン輸送する、その名も通称"Wesibussi(しょんべんバス)"。13時から24時まで一時間に一回、大学前と町の中心、後は学生が指示する、ディスコやら、酒を買い込むためのスーパーやらに指示されたとおりに69番のバスが走り回ります。大学前に丁度止まっていたので何となくビデオを回していたら、こんなこと(1.5Mbyte)に成ってしまいました。まぁ、一般人と酔っぱらいを分けるという意味では大変いいのかも知れませんが...。このバスの運転だけはしたくないです、心の底から。

バスが24時まで走り回っていると言うことは、そのぐらいの時間に学生が帰ってくると言うことを意味します。私が住んでいるところは学生街の真ん中ですから、おかげでうるさいうるさい。深夜を過ぎると酔っぱらった学生の叫声が近所一杯に響き渡っている状態です。

学生のつなぎ 学生たちはこの時期、みんなこんな感じのカラフルなつなぎを来ています。つなぎの色はTOL(情報処理科学科)は黒、電気系工学科は青と言う具合に、学科毎、学部毎に決まっています。このつなぎを着るのには理由があって、例え酔っぱらってどこかで吐こうとも、道ばたで寝てしまおうとも、少々汚れても大丈夫というのがその心です。つまり、死ぬまで飲むために最適化された服と言うことになります。

大企業の宣伝も そのつなぎにずっと近寄ってみると、見慣れた企業のロゴがあります。これ、学生が勝手に書いてるわけではなくて、ちゃんとスポンサーとして記載されているんです。工学系の学生にはNOKIA、化学系の会社にはKEMILA、情報系の学生にはVTTとかロゴが入っています。VTTとはフィンランド国立研究所。日本で言えば、産業総合技術研究所やら、情報通信研究機構やらが学生の「飲む」ためのユニホームをスポンサードしているわけで、文化というのは恐ろしい物です。

猿も帯帽 一方、学生がかぶっている白い帽子は、高校を卒業した証明。別にもらえる物ではなくてみんな買うようですが、これをかぶってないと格好が付きません。Kaijonharjuの図書館の前の猿の像ももれなく白い帽子をかぶっています。この帽子には黒い房がついていて、Vappuを体験する度に一つずつ結び目が増えていき、5年目にこれが輪っかに変わります。結び目がたくさんあれば、それだけ"Cool"ということです。

SIMA お祭りと言えば、食べ物と飲み物が重要ですが、その代表選手がこのSIMA(シマ)。Honeymoonにのむ「蜂蜜酒」だとあちこちに説明されていますが、ちょっと違う感じです。これは買ってきた物ですが、普通は手作り。もっと白く濁っています。学生新聞に載っていた作り方によると...『レモン2個をよく洗い、皮を薄くむいて、その下の白い部分を取り除き、中身を薄切りにします。薄切りレモン、レモンの皮、それに砂糖350gと黒砂糖350gを加えて、2.5リットルの熱湯を注ぎます。蓋をして少し待ち、少し温度が下がったら、2.5リットルの冷たい水を加えます。しばらく置いて生ぬるくなったら生イーストをちょっと加えて室温で一晩。きれいな瓶に小さじ一杯の砂糖と干しぶどう1-2粒を落として、できあがった液体を入れ、冷蔵庫に入れておいて、レーズンが浮いてきたらできあがり。』はい、勘のいい人は気づいたと思いますが、砂糖とイーストを入れてねかせるわけですから、アルコール発酵した飲み物が出来ます。学生さんはアルコールに飢えていますから、当然こんなレシピ通り作るわけもなく、大量の砂糖と大量のイーストをいれて"Super Strong Sima(S³)"(某フィンランド人友人命名)を作り出そうとします。ちょっとイーストを入れすぎるとおなかを壊すので、余りお勧めはしませんが、学生たちは至って幸せそうに、白く濁ったオレンジ色の液体を飲んでいます。町のマーケット広場でも売られていますが、子供から大人まで、みんな仲良く飲んでいます。

TIkkuleippa もう一つがこのTippaleippä(ティッパレイッパ)。ひも状になっている揚げパンですね。こちらは結構「普通」な味です。

虫? さらにもうひとつがこれ、端から見ると電線が大量に売られているように見えますが、よくみるとSUKLAA(チョコレート)とか書いてあります。これキャンディなんですね、ラクリッツという黒い飴を芯にして、その周りにバナナやらチョコレートやらが巻いてあります。長さは1mぐらいでしょうか。マーケット広場の店先には、あちらもこちらも色とりどりの紐々々、中には、「洗濯ホースか?」と見まごうばかりの太い白い紐まで打っています。

cool? これをこんな具合に口から垂らせば、すっかり貴方もオウルっこ。見るからに"COOL!"って感じでしょ? 小さな子供は欲張りですから、いろんな色の電線を4-5本口からぶら下げて歩いている子もいたりします。それにしても、いい天気。気温はすっかり上がって、18度ぐらいまで行っています。

イベントの方は地域ごとに異なります。各地のメインイベントはフィンランド語版WIKIPEDIAに載っていますが、基本的にはメインイベントは新入生のイニシエーション。ここの写真にあるようにヘルシンキでは、女神像の周りにクレーンでつるされた学生が、白い帽子を上手く載せなければならないなんてイベントがあったりします。オウルの場合は、27日のKirkkovenesoudut(教会船レース:フィンランドは湖だらけなので、昔教会に行くのに使った乗合船で競争:今年は川に氷が多すぎて危険と言うことで中止)、29日のOlutviesti(酔っぱらいレース:森の2本の木の間をなん往復かするレース。但し、一往復毎にビールを一本飲み干さなければならない)といくつかのイベントを経て、4月30日のfuksit joutuvat limboon(新入生は全員リンボー)へと続きます。

飛び込む準備は万端 Fuksit joutvat limboonは、要はオウルの町の中にある公園の池で、トップの写真のように滑り台から飛び込んで、頭まで水につかるだけなんですが。殆どの学生は裸で飛び込みます。ビデオも撮ってみましたが、全裸で飛び込む学生があまりに多いので、放送コードに引っかかりそうなのでやめにしました。トップの写真はまだまだおとなしい学生さんだと思って、後はご自由にご想像下さい。想像を助けるためにもう一枚つけておきますね。

ちなみにこの行事、以前は港の方でやっていたんだそうですが、10年ほど昔に酔っぱらった一般人(学生ではありません)が「おれもやる」と飛び込み参加し、飛び込んで、港の氷の下に潜り込んで浮いてこなかったという不幸な事故があり、それ以来、こちらの公園に移ったんだそうです。今年は暖かいので池に氷も張っていませんが、それでもレスキューの人がウェットスーツを着てしっかり待機しています。毎年のことながらご苦労様なことです。私は途中で帰ったので知りませんでしたが、どうやらどこかで事故があったらしく、レスキューの人が緊急出動と言うことで、今年は30人程度でリンボーは打ちきりになったんだそうですが。

今日5月1日はハイライト、町中に学生と元学生が白い帽子をかぶって集います。でも、2001年に行ったので今日はやめにしておきます。あんまり人波に揉まれたくもないですし。

なお、VAPPUについてもう少し知りたい方は、こちらのブログにも上手に書かれていますので、ご参考までに。

HAUSKA VAPPUA!


バーベキュー 今日の私は町に出るかわりに、天気がいいのでベランダでバーベキューをすることにしました。日本から持ち込んだホットプレートで太陽を浴びながらのバーベキューです。これ、夕方6時頃の写真なんですけど、ずいぶん明るいと思いませんか。今日からフィンランドは夏モードへ切換。お店は日曜日にも開くようになり、短い太陽の季節を楽しむために外で時間を過ごす人が増えてきます。そして大学からは学生の姿が消えていきます。