9月16日 オウルってどこですか?


私がフィンランドに来て以来、沢山の親族・友人・知人が大学・研究所を尋ねて、あるいは観光目的で、私の所を尋ねてきます。その度毎に必ず聞かれる質問がこれ。

ところで、オウルってどこにあるんですか?

実際の所、日本の主なガイドブックの北欧編・あるいはフィンランド編でオウルについて書いている本は、私の知っている限り一つもありません。かの「地球の〜」も10年前にはオウルに1段を割いていましたが、今は一行も記載がありません。

ということで、今日はオウルの紹介記事を書いてみることにします。
フィンランドの地図 左の地図にあるように、オウルはボスニア海の一番奥、北緯65度の線上にある港町です。

なお、地図のオリジナルはここにあります。オウル市の公式ホームページには、日本語を含め、各国語の説明があり、繁華街マーケットプレースの様子が見られるライブカメラもあったりしますので、ご参照下さい。。

オウル川の河口にあるこの町は、17世紀、良質のタールを出荷する港として栄えました。当時の主な取引相手は英国。タールは主に大英艦隊の船の船底を保つために用いられたわけです。英露戦争の際に、大英艦隊の司令官が「ロシアへタールを輸出させないため」にオウル市を攻撃し、オウルを灰にしてしまったという笑えない話もあったりします。オウル港は3日に渡って燃え続けたそうですが、彼らが攻撃して灰にしたのは、既に大英帝国が購入・支払い済みのタールだったという落ちがついています。

今のオウル港はマーケットプレースになっていて、オウルの象徴になっている水兵の像とレストランなどとして利用されている古い木造倉庫が当時を偲ばせます。港に浮かんでいるのは殆どレジャーヨットです。

水兵さん
オウル空港 現在のオウルの玄関は、オウル空港。フィンランドで二番目に大きく、二番目に乗降客数の多いこの空港には、ヘルシンキと一時間約一往復のフィンエアー国内便で、ストックホルムと一日約二往復のエアーボタニア(Air Botnia:スカンジナビア航空とコードシェア運行)便で結ばれています。二番目に大きいと行っても、空港の規模は日本の地方空港程度のものなのですが…

列車(VR)で来ることも可能ですが、ヘルシンキから約8時間を要します。価格はぐっと安くなりますが、あまりお勧めの出来る交通機関ではありません。

オウルの人口は現在約12万人。都市の大きさとしてはフィンランドで5番目です。人口規模の割には町の中心部は割合こぢんまりしています。市内中心部付近で最も美しいのが、港からオウル川にかかる複数の橋を回るコース。夏場はここを散歩すると風が涼しい上に、フィンランドでは珍しい「今も使われている昔の家」を見ることができます。

今年川の袂には新しく噴水が作られて、夜には美しくライトアップしていたりします。

オウル川の夜景
オウルテクノポリスの案内図 現在オウルを支えているのは各種ハイテク産業。市内中心部から川を渡って少し進んだ先にあるLinnanmaa(リンナンマー)の周辺にある、オウル大学、VTT(国立研究所)オウル支部を中心とした、計算機関係のベンチャー・NOKIAの研究所などが集積されたTechnopolis。オウル大学病院を中心に医療関係のベンチャーが集積したMedipolis、オウル空港地域を中心に、ハイテク産業工場(主に集積回路関係)、科学(主にバイオ)関係のベンチャーが集まったMicropolisと市が支える三つの研究ブロックを中心として、多数のベンチャー、研究所が集積しています。

特にLinnanmaaは、ヘルシンキの西隣エスポー(Espoo)市にあるヘルシンキ工科大学、VTT本部を中心としたOtaniemi(オタニエミ)に並び称される研究都市として広く知られた地域です。

モダンな研究施設が集まっていますが、これらは全て森の中にぽつぽつと隠れるようにたてられているため、町はとても美しく保たれています。

ハイテク都市オウルは観光地としてはそれほど有名ではありません。オウルの観光地は、昔の家が集められた野外博物館Turkansaari(トゥルカンサーリ)、ハイテク都市オウルの様々な知識を一堂に集めた青少年科学館Tietomaa(ティエトマー)、そして湖の側に静かに広がる写真のオウル大学植物園が三大観光地です。正直なところ、パック旅行で駆け足で見に来る観光地としてはそれほど魅力的とはいえません。

ただオウルには、ゆったりとしたリゾートホテルがあり、夏にはヨット、カヤック、釣りがたのしめますし、冬(というより春先)にはスキーが楽しめるスキーリゾートIso-Syote(イソ=シュオテ)があります。ゆっくり腰を落ち着けてのんびりするには非常に適したところです。

雪のオウル大

とにもかくにも、フィンランドの成長の原動力となった都市であることは事実です。外国人研究者が多く住んでいるため、町の中で英語が通じなくて困ることは殆どありません。もちろんゼロではないですが。

ハイテク都市でありながら、のんびり出来るリゾート地にもなりうる町。オウルという町は、日本の研究都市に欠けている何かを探し出せる所です。


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