7月 2日 Summer Trainee


夏休みです。

教授陣も、研究員も、博士学生も、だ〜れもいません。

前にも何度か書きましたが、この国では夏休みは約5週間あり、基本的に殆どの人が休みを取ります。しかも「交代で休みを取る」とか、「休みの間の仕事を言付けておく」という発想が殆どありませんので、担当者が休みを取ったら何をしようにも「はいそれまでよ」です。

夏休みを取るのは夏至祭を頭に5週間というパターンと、7月の一番いい時期をオウルで過ごして8月に南ヨーロッパなどに移動というパターンとおおむね2種類に分かれます。8月休暇組も、一番いい時期のオウルにいるわけですから、あっという間にかえって、ビーチに遊びに出かけます。早い話が、仕事には来ているけどだーれも働いていない。この時期はどこへ行っても開店休業です。

じゃ、この時期完全に大学の中が空になるかというとそうでもありません。研究室の集まるエリアでは普段見かけない若い学生が目に付きます。彼らはSummer Traineeと呼ばれ、夏休みの間だけ研究室で働いている学生です。いわば、アルバイト研究員と言うところでしょうか。

Summer Traineeは大抵修士の2-5年の学生で、給与をもらって研究活動に当たります。私が所属しているのは情報処理科学科ですので、彼らに与えられるのは大抵基本的なソフトウエア開発や、Webなどを利用した現状・文献調査。これらの仕事は当然プロジェクト遂行にはなくてはならない仕事ですが、時間のかかる割に成果にならない仕事でもあります。これを肩代わりしてくれるわけですから、研究プロジェクトを進める博士課程学生にとっては力強い味方になります。もちろんSummer Traineeの実力次第ですので運次第ですが……。

一方のTraineeにとっては、休みの時期を利用して興味のある研究に関わるいいチャンスです。ここでの経験を元に修士課程修了後、どの研究室で博士への研究を進めるのかを考えることが出来るわけです。研究室側にとっても、学生の実力を見極めることが出来、実力のある学生を早めに囲い込むことが出来ます。いわば、学内インターン制度です。大手企業でも同様にSummer Traineeを実施しています。こうなると本当にインターンシップ。

ヘルシンキ工科大学・物理学部 一方でSummer Traineeは、交際交流の舞台にもなっています。Summer Traineeの一部はIAESTEなどの国際学生交流プログラムを通じて、海外からの学生の受け口としても広く使われています。私が94年にヘルシンキ工科大学に留学した際もIAESTEを通じてSummer Traineeとして受け入れられています。

面白いのは、海外から来たSummer Traineeの出戻り率。相当の確率で正職員として、あるいは客員研究員として、再びフィンランドに帰ってきています。かくいう私もそんな出戻り組の一人なのですが。フィンランド人学生であれ、外国人であれ、実力のあるものには必ずもう一度声がかかりますし、若いうちにフィンランドで「実際の社会構成員として」生活することで、次にもう一度生活することを本気で考えられるようになります。もちろんこの国がそれだけ「生活しやすい国」だと言うことも重要な要因です。壁は当然ありますが、フィンランドは外国人であっても比較的生活しやすい国ですので。

この国が外国人にとって生活しやすい国になる過程で、Summer Traineeの果たした役割も又大きいようです。大学でも企業でも相当数のSummer Traineeが出入りしますので、生活をともにする外国人が必然的に増えてきます。彼らはここで生活しているわけですので、買い物もしますし遊びもします。門戸を閉ざしたり特別扱いしている場合ではありませんから、勢い社会もそれに併せて順応してきます。

日本も真の国際化を目指すならば、こういう制度を取り入れていくことは必要だと思うんですが

ヘルシンキ工科大学・講堂
狭い研究室 研究プロジェクトの予算にも寄りますが、大体博士課程学生一人に一人のSummer Traineeが付く形になっています。私の部屋には私と博士課程の学生が一人いますが、それぞれに一人ずつSummer Traineeが付いていますので、狭い部屋に4人がすし詰めになっています。

この狭い部屋の中で9台の計算機が熱気を巻き上げ、しかも4人がすし詰め。暑いったらありゃしない。今日の気温は最高25度、オウルでは猛暑の部類です。しかも建物は夏向きに造られていますから、風も通らない。

日本から比べたら涼しいはずですが、あ〜、あづ〜


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