6月22日 夏至祭


今日は6月22日、夏至。一年で一番日が長い日です。ここ一月ばかりずーっと夜のない日が続いていますが、今日は本格的に夜がありません。

フィンランドは今日は夏至祭、お休みです。フィンランド語でJuhannus(ユハンヌス)とよばれるこのお祭りは、日本でいうとお盆みたいなものです。今週あたりから殆どの人が休暇に入り、オウルの町はすっかりもぬけの殻。殆どの人が別荘(サマーコテージ)で家族と一緒に過ごします。ユハンヌスは、家族と湖畔の別荘でバーベキューをし、サウナでのんびりする日です。

とはいっても、誰もがみんな別荘を持っているわけではありませんから、オウルの町に残る人たちもいます。でそんな人たちを対象に、オウルの町でも夏至祭は行われます。基本的には昔からのお祭りをそのまま再現するわけですが。

トゥルカンサーリの周辺の景色 お祭りが行われるところは、オウルの町からオウル川(Oulujoki)をさかのぼったところにある中州、Turkansaari(トゥルカンサーリ)にある、野外博物館です。北欧にはストックホルムのスカンセンを初め、島一つを全て博物館として使って古い建物を集めているところが多くありますが、この島もそういったところです。ま、明治村と思っていただければ間違いないでしょう
普段はそれほど人の多くないところですが、今日は目が点になるほどの車が並んでいます

私も今日は両親が来た関係で、友人に車で案内してもらいました。もちろん別荘に行く時間をずらしてくださったという具合です。

祭りに来た車の列
野外博物館の入り口 この博物館には、古いフィンランド北部の民家から、最近の木こりの宿所など、様々な種類の家が、その当時の生活をそのままにとどめた形でおかれています。別に説明が気があったりするわけではなくて、「ただおいてあるだけ」なのですが、当時の生活がわかって面白い。日本ならば囲炉裏になるところが、ここでは昔の家でも石造りのストーブ、その上に丸い鉄板があってその上に鍋をおいて煮炊きするようになっています。

フィンランドでは今も電気で煮炊きしますが、昔から鉄板の上で熱を与える方式だったんだなぁとわかります。

オウルは元々、船の表面をコーティングするためのタールの生産地・出荷港として栄えたところです。今日は特別に、伝統的なタール精製の実演があります。陽気な歌が流れる中、民族衣装に身を包んだ人たちが土に覆われた木材の山に火をつけます。一度激しく燃え上がった炎はすぐに煙だけとなり、じっくりと木を蒸し焼きすることでタールを抽出します。

それにしても、いくら伝統的な精製法の実演といっても、何も丸一日かけて本当にタールを取ることはないと思うんだけどなぁ、夜中誰も観光客見てないだろうに。

タール精製の実演
フィンランド式のブランコ こんな四角い形をしたブランコもあります。スカンセンでも同じものを見た気がしますので、北欧全般で同じ形をしているのかもしれません。

それにしても今日は子供が多いので、ブランコも取り合いになっています。ふと気が付くと20人ばかりの子供が鈴なりになっていて、ブランコが激しい音を立てていました。をいをい、壊すなよぉ、という感じです。

その隣では子供たちが、フィンランド式の竹馬に興じていました。見るからに難しそうな乗り物ですが、さすがに50前後の男性は見事に乗りこなしていました。私も挑戦しようかと何度か竹馬に近寄りましたが、いかんせん子供が多い。一度もさわらせてもらえませんでした。うーん、残念。 フィンランド式の竹馬
ダンス お祭りと行っても特に何があるわけでもありません。昔のダンスをご近所のダンス同好会の方々が披露したり、そのあたりの人たちが集まってダンスをしたり、ま、そんなところです。典型的なフィンランドらしいお祭り。みんなめいめい、自由に時間を楽しんでいます。

昔々は、むんなこんなふうに夏の時間を過ごして、その場で出会った男女が森の中へめいめい消えていったのだそうです。これはフィンランドだけのことではなく、スウェーデンでも同じ。この夏のお祭りが、スウェーデン=フリーセックスの国というイメージの源になっています。フィンランドもサマーコテージでサウナの後に女性が裸で湖に飛び込んだりしていますので、初めて来た人はもしやと思うそうですが、当然そんなことはありません。

私も適当に道ばたで売っているマッカラ(Makkara: ソーセージ)を食べながら、何となく子供たちを眺めて時を過ごします。

とはいっても、当然夏至祭と特記するからには何かイベントがあるわけで、夜10時前になると、島の入り口の橋には鈴なりに人々が集まってきます。

私はもう少しイベントに近いところにある桟橋に陣取って撮影をしていましたが、こちらもすごい人。気が付けば桟橋ごと水に沈んでいました

橋に集まった人々
コッコ ユハンヌスのメインイベントはなんと言ってもこのコッコ(Kokko)。木をくみ上げて造った櫓に火をつけ、天高く燃やします。日本で言うと、どんど焼きのようなものでしょうか。英語でボン=ファイヤー(bonfire)と言われますが、何となく日本の「盆」と同じに聞こえてきます。そういえばさっきみんな盆踊りしてたし

ヘルシンキ近郊の、セウラサーリ(Seurasaari)では、コッコの前で昔ながらの船上結婚式が行われたりするそうです。私は一度も見たことはありませんが。

気が付けば川の対岸などでも同じように火が上がっていました。サマーコテージでもめいめい昔ながらのコッコをやって過ごすのだそうです。

そういえば昔母方の田舎ではどんど焼きをやっていましたが、もう何年もお目にかかっていません。日本ではこういう習慣は消えつつあるのに、フィンランドではちゃんと「民族文化」という形で保たれています。国民が少なく、愛国心が強いからこそこうやって続いていくのかもしれません。

白夜の薄明かりの中で、水面に揺れる炎はどことなく優しく、どことなく弱々しいフィンランドの姿そのものに見えてきます。

フィンランドの夏はこうやって一番長い日を迎えます。

川とコッコ


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