5月30日 卒業式


欧米の学校は9月始まり5月終わり。今日は5月の終わり、卒業式の日です。大学の中に燕尾服に房付きの白い大学帽を被った学生、それを見に来たご両親とおぼしき少しおしゃれをした初老のご夫婦が目に付きます。

私のところにも2週間ほど前に、「大学の全教授は卒業式に出席するように」という旨の書類が回ってきていましたが、ヨーロッパ式の燕尾服など持っていようはずもなく、2〜3時間の間、フィンランド語で話されるありがたいお話を聞くのはどう考えても苦痛以外の何者でもないので、遠慮させていただくことにしました。

フィンランドの大学制度は日本とは大きく違っており、大学の卒業生=修士修了生です。日本で言うところの4年制の大学は、いわばアメリカのコミュニティカレッジや日本の高専・専門学校に近い扱いです。オウルにもOulun Seudun Ammattikorkeakoulu、英語でOulu Polytechnic、日本語でオウル工科大学と訳されている専門学校がありますが、ここを卒業しても大学卒業とはみなされません。大学(Yliopisto: 直訳するとAfter(Yli) Study(Opisto))と専門学校(Ammmattikorkeakoulu: 直訳するとProfessional(Ammatti) High(Korkea) School(Koulu))とは厳密に区別されています。

工科専修校で大学とみなしてもよいとされているのは、ヘルシンキ工科大学(Teknillinen Korkeakoulu : TKK)とタンペレ工科大学(Tampereen Teknillinen Korkeakoulu : TTKK)ぐらいのものだと思います(他にもあるのかもしれませんが)。しかしこれらの大学でも高等(Korkea)学校(Koulu)と呼ばれているように、Yliopistoとは若干区別されているようです。

フィンランドの大学は、6年間の修士コース。その後(制度上)5年間の博士コースからなります。博士コースでは途中2年目でDiplomaと呼ばれる中間的な学位を取ることもあるようです(このあたりの制度は相当入り組んでいるので正確には把握できていませんが)。ヨーロッパでもこの5年間の博士コースという形態をとっている国はほとんど無いそうで、これがために卒業に苦労している外国人学生も多いようです。

6年間の修士コースでは、基本的に最後まで講義中心の学生生活になります。研究室・ゼミといったところに配属されて、卒業研究をするのは最後半年程度。つまり日本で言う学士の卒業研究と同様のまとめを最後にするわけです。

5年間の博士コースでは、うってかわって基本的に研究中心の学生生活になります。理科系学制の場合は、某かの研究プロジェクトに雇われる形になることが殆どで、このあたりのシステムはアメリカの博士学生と大きくは変わりません。だいたいどの学生も、博士を取得するまでに一度はプロジェクトのマネージャを経験することになります。もちろん名目上のマネージャは教授ですが、実質的には学生が他の大学や企業との交渉を直接取り仕切るのが普通です。

ただし博士コースでも単位取得は必要で、一定数の講義に出席しなければなりません。決して講義数は多くないのでこれが大きな障壁になることがあります。ただ、博士コースの学生が修士・博士コース向きの講義をすることも決して珍しいことではありませんので、お互いにお互いのコースをとって単位の互換をするような場合もあるようですが。(^^;;

で、最後に博士論文をしたため、公聴会、審査会を受けて博士号取得となるのですが、フィンランドでは公聴会が大変。まず審査委員は基本的に3人で、一人が指導教授、もう一人が国内の別の大学の関連研究をしている教授、最後が国外の大学の関連する教授という構成。この三人を相手に通常20-40分の講演をしたあと、3-6時間程度の質疑応答が待っています。これをすませて初めて、博士の印であるシルクハットをかぶることが許されます。
緑の濃くなったオウル大学 それにしても、卒業式に会わせたかのように急に暖かくなりました。今日の最高気温は13度。一昨日まで雪が降っていたとは思えないような春の陽気です。

Linnanmaaの緑も濃くなり、待望の春を謳歌するかのように、木々に若葉がが生い茂っています。日差しの長いのと相まって、夜中に散歩をしても気持ちがいいぐらいの暖かさです。

♪春はお別れの季節です、みんな旅立っていくんです♪というおにゃん子クラブの歌(元サイトはこちら)がありましたが(我ながら古いなぁ)、春が来ると同時にお別れの季節がやってきました。仲間内でも、博士を取得してスウェーデンに移住するアメリカ人。春学期を終えて本国へ帰っていくイタリア人、イギリス人、シンガポール人。会社をかえって本国へ帰るフランス人。一斉にそれぞれが故国へ、あるいは別の国へと去っていきます。

人々が去って、長い夏休みがやってきました。9月までオウル大学は静かな時を迎えるようです。


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