5月25日 携帯電話


この一週間、ずーっと雪がちらついています。春はいずこへ行ってしまったのでしょうか。話によると、25年ぶりの寒い春だそうで、どうも悪いときに来てしまったようです。

夜になると0度前後まで気温が下がることもあるのですが、それでも地面が見えていると言うことはもう春。日もすっかり長くなってきています。ということで、週末は12時前ぐらいまでビールを飲んで、それからダンスフロアのある飲み屋に移動して、だいたい午前2時ぐらいまで仲間と騒ぐのが常になっています。

いつもだいたい集合時間は夜9時。私が住んでいるLinnanmaaからKeskusta(市内中心部)までは、バスで15分程度。いつも決まって20時45分発のバスで町へ移動します。途中Merikoskenkatuというところで運転手を交代しますが、今日交代で乗ってきた運転手はちょっとしたものでした。

彼は、携帯電話で話しながらバスに乗り込むと、おもむろにそのまま運転し始めました。他の乗客を見ても、特にいやな顔をしている人もいません。結局私が降りるまでの間、彼はずーっと携帯をかけながら運転していたようです。

後で友人に話を聞いてい見ると、携帯をかけながら運転する運転手は別に珍しくもないそうです。時にはバスのセンターと携帯で話していることもあるそうで、そうなると業務の中で携帯をかけていることになります。

ご存じの通りフィンランドはノキアの本拠地。Nokiaという小さな町の製紙工場は、一度「マッチ棒からテレビまで」商う巨大国内企業になった後、90年代初頭の不景気の時に携帯電話に資源を集中して、国際的な携帯電話メーカへと生まれ変わったのは有名な話です。フィンランドの現在の携帯電話世帯普及率はおよそ80%だそうで、就学前児童からお年寄りまで、幅広い層が携帯電話を持っています。

夫婦共働き、子供を幼稚園や保育園に預けるのは国民に等しく与えられた権利、休みはガスも電気もないサマーコテージ(別荘)で過ごすのが当たり前。こんなフィンランド人の生活スタイルを考えると、携帯電話がこれだけ普及したのは自然な成り行きなのかなと思えてきます。

フィンランド人の携帯電話好きはヨーロッパでは有名な話で、『98年、ミカ=ハッキネンがF1ワールドチャンピオンをかけて戦ったハンガロリンク=サーキットに多数のフィンランド人が詰めかけたため、その週末はハンガリーの電話システムは完全にパンクして殆ど電話がかからない状態だった。』というのは、(本当かどうか知りませんが)よく語られている話です。

これだけ携帯電話が生活の中に浸透していると、町で携帯をかけている人の姿を見るのも、車を運転しながら携帯をかけている人の姿を見るのも、一人で大声でしゃべりながら町を歩く人を見かけるのも(イヤホンマイクを使ってはなしている)、全く日常の光景です。日本で最近特によく聞くようになった「周りのお客様の迷惑になりますので、携帯電話をお切りください」なんてアナウンスも全くありません。バスに10分乗っていると、必ず一度や二度はノキアサウンドと呼ばれる携帯電話の音が聞こえてきます。

日本に行ったことのあるヨーロッパ人やアメリカ人は「なぜ電車で携帯で話すのが迷惑なんだ?」と不思議がります。「電車やバスは、座ったまま移動できる数少ない場所だぞ、バスや電車で携帯をかけなくてどこでかけるんだ? 歩きながらかけているよりよっぽど安全じゃないか。」

私も全く同感です。はっきり言って姦しい女性グループ(女子高生からお年寄りまで)の方が、よほど音量が高い。心臓ペースメーカの問題があることは認めますが、これとて「製造物責任」の範疇だと思います。携帯電話で影響を受けるペースメーカーは(手術が伴うのでそうおいそれとは行かないでしょうが)「メーカが責任を持って」交換するべきだと思います。少なくともマナーの問題で禁止するような筋合いのものではないと思います

それにしても、国境線を越えても同じ番号でアクセスできるGSMの携帯電話は便利です。たとえ私がどこの国にいても、GSMでカバーされてさえいれば+358(フィンランドの国番号)-40-XXXXXXXでいつでもつながります。携帯電話同士なら、国際電話になるかどうかを勝手に判断してくれます。自分の携帯からかけるときも特に「どこの国にいるか」を意識する必要はありません。日本の携帯電話はGSMではありませんから、こうはいきません。早く次世代携帯に移行して、日本の携帯も同じように使えるようになって欲しいものです。ただ革命的なサービス変更がなければ、GSM諸国はそう簡単に次世代携帯電話に移行しないように思えますが。なにせGSMは便利ですので……。


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