5月16日 机が来た


今日、待ちに待っていた仕事机がようやくやってきました。オウル大学に赴任してからすでに二月半。ようやく本格的に仕事ができる体制が整いました。

いままでは、部屋の片隅のお茶机にノートパソコンをおいて、本は日本から送ったときに使った段ボール箱に入れて、仕事をしていたことをかんがえると、ものすごい進歩です。こっちに来るのは前からわかってたのに、ここまで時間がかかるとは、のんびりしているというか、何というか。フィンランドらしいといえばフィンランドらしいのですが……。
仕事机 ジャーン、これが私のオフィスの写真です。

同部屋の同僚と、あーでもない、こーでもないと、一日作業してようやく完成。ものすごく仕事がしやすくなりました。

ちゃんと本棚もあれば、机もある。すばらしいでしょ。

写真を見れば気づいてもらえると思いますが、机は本棚と一体化しています。これはオウル大学では一般的な形式。ヘルシンキ工科大学ではまた違った形式をしていましたから、フィンランド全体がこうだというわけではありませんが。

しかもこの机、本棚に対して固定されていません。本棚側の橋は、棚に乗せてあるだけです。非常にシンプルな設計になっています。

もう一つ日本の感覚では信じられないのは、この本棚には側面と棚を結ぶ釘やねじが一本もありません。側板に対して裏板(薄いベニヤ板)は小さい釘でとめられているもののの、側板と棚は差し込んであるだけです。天板とか底板とかいう概念もなくて、上から下まで差し込んであるだけの棚が並んでいます。つまり、側板、棚をバラバラに持ってきて、差し込んでできあがりという非常に不安定なものな訳です。本の重みでしっかりするといった感じです

さらにもう一つ、この本棚、どこにも固定されていません。部屋の真ん中にちょこんと立っています。地震が全く起こらないからできる話で、日本だったら怖くて近寄れません。一番上の棚に重たそうなファイルを並べるなんてのも、日本の感覚ではまずできないことです。

いろいろ驚くことはありますが、白と薄めの木目からなる棚は、フィンランドらしい、シンプルな美しさがあります。フィンランドの家具、食器などを見ると、一件工夫のない非常に単純な風合いをしていますが。それを上手に組み合わせると、シンプルかつ美しく仕上がります。エンジニアの私にとっては、機能性が前面に出たフィンランドデザインは、心にしっくり来ます。
この本棚にも随所に感心する工夫がされています。

棚と側板との差し込みを見るとピンが全く飛び出していません。これは棚の四端が「コ」の字形になっており、これを側板の柱になっている二本の木の間に差し込んで、裏側でピンに引っかける構造になっているためです。

こうすることで、側板がどちらにも倒れにくくすると同時に、ピンを二本の木に通して棚の荷重を二本の柱に分散する構造になっています。本棚の強度が上がると同時に、ピンがじゃまにならず、見た目にも美しい。非常によくできたデザインです。

棚の接合部
体重計 もう一つ、ヘルシンキの百貨店で見かけたシンプルな商品がこれ、体重計です。

重さを量る構造が機械的に構成されていて、四点で支える構造になっています。表面をガラスで構成することが果たして機能的なのかどうかは疑問がありますが、一時期日本で流行ったスケルトン構造に自然になっています。

フィンランドは全てが素朴です。料理も簡素で「これぞフィンランド料理」という有名なメニューはありませんし、何となく「華やかさ」がありません。だからこそ、何となく心の落ち着く空間や生活が、あちらこちらに溢れているような気がします。


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